アノテーション外注は、人工知能(AI)や機械学習(ML)を導入する日本企業にとって、データ品質を向上させつつコストを最適化する有効な手段として注目を集めています。
自動車、ヘルスケア、小売、製造などのさまざまな業界においてAI活用が加速するにつれ、高精度なアノテーションデータに対するニーズも急速に拡大しています。日本のデータアノテーションツール市場は2024年の市場規模1億9,730万ドルから、2033年には36億5,200万ドルに達すると予測されており、今後も巨大な需要が見込まれます。
一方で、膨大なデータ量への対応や、高度な注釈技術、人材不足といった内製化の壁に直面している企業は少なくありません。
このような課題を背景に、信頼できるアノテーションサービス会社への外注は、課題解決とプロジェクト成功への効果的な道として選ばれています。
本記事では、アノテーション外注におすすめの企業7選を紹介するとともに、外注のメリットやパートナーの選び方、連携を円滑に進めるためのポイント、さらには費用相場まで、網羅的に解説します。
貴社のAIプロジェクトを成功へと導くためのヒントがきっと見つかるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
おすすめのアノテーションサービス会社一覧
アノテーションの外注先を選定する際、企業実績、専門性、そしてセキュリティ体制などの要素は重要な判断基準となります。ここでは、国内外で高い評価を受けているアノテーションサービス会社を7社厳選し、それぞれの強みや特徴を詳しくご紹介します。
LTS Groupは、2016年の設立以来、日本、韓国、北米、ヨーロッパなどグローバルに事業を展開する急成長企業です。特にベトナムの豊富なITリソースとコスト競争力を最大限に活かし、高品質なAI向け教師データ作成サービスを提供しています。自動運転、医療、小売、農業といった専門分野から、最新のLLM開発まで、幅広いニーズに対応できる技術力と実績が強みです。

- 設立年:2016年
- 本社:ベトナム
- 支社:日本、韓国、アメリカ
- 従業員数:500人以上
- 主なサービス:LLMコーディング向けデータラベリング、画像・動画アノテーション、音声アノテーション、テキストアノテーション、3Dセンサーフュージョン
- 得意領域:バウンディングボックス、 ポリゴン、セマンティックセグメンテーション、 3Dキュボイド、キーポイント、点群/Lidar、テキスト分類、固有表現抽出(NER)、音声文字起こし、話者識別、感情認識など
LTS Groupの強み
- 圧倒的な実績と最大99%を誇る品質:これまでに500件以上のアノテーションプロジェクトを完遂し、処理したデータユニットは500万件を超えます。画像、動画、音声、テキスト、さらにはマルチモーダル入力まで、多様なデータで最大99%という高い精度を実現しており、その品質は世界中のクライアントから高く評価されています。
- コスト競争力:ベトナムの優れた人件費と税制優遇を活かすことで、高品質なサービスを競争力のある価格で提供します。プロジェクトコストを最大30%削減することも可能です。
- 円滑なコミュニケーション:日本語能力試験N1〜N2レベルのプロジェクトマネージャー(PM)、ブリッジSE、コミュニケーターなどの従業員が在籍しています。これにより、仕様の伝達や進捗報告(報連相)がスムーズに行われ、海外拠点でありながら安心してプロジェクトを任せることができます。また、従業員の80%が英語でのコミュニケーションに対応可能で、グローバルプロジェクトにも柔軟に対応できます。
- 専門分野から最新技術まで対応する専門性:自動運転、建設、製造、小売といった専門知識が求められる業界向けに高品質なデータを提供します。また、CVATやLabel Studioといった汎用ツールからクライアント独自のツールまで、柔軟に連携可能です。必要に応じてカスタムツールを開発する技術力も有しています。
認証・賞
- ISO 27001 (情報セキュリティ)
- ISO 9001:2015 (品質管理)
- ベトナムトップICT企業:ベトナムソフトウェア・ITサービス協会(VINASA)よりアノテーションアウトソーシングのリーディング会社に認定される
契約・ワーキングモデル
- 契約形態:請負型契約、準委任契約(タイム・アンド・マテリアル)
- ワーキングモデル:ラボ型開発(オフショア開発センター・ODC)、人材派遣・オンサイト、ハイブリッド形態(ODCとオンサイトを組み合わせる形態)
こんな企業におすすめ
- 高品質とコストメリットを両立させたい企業
- 自動車や医療など、専門性の高いデータを扱う企業
- 大規模かつ継続的なアノテーションプロジェクトを計画している企業
- グローバル展開を視野に入れている企業

FastLabel株式会社は、AIを開発・運用する上で不可欠な「AIインフラ」を創造することを目指します。同社の最大の特徴は、高機能なAIデータプラットフォーム「FastLabel」の開発・提供と、それを用いた高品質なアノテーション代行サービスを両輪で展開している点にあります。単なるデータ作成に留まらず、AI開発の上流工程から運用(MLOps)までを一気通貫で支援できる総合力が強みです。

- 設立年:2020年
- 本社:日本
- 主なサービス:教師データ作成支援(データセット提供、アノテーション代行、生成AI開発データ作成)、AI開発支援(モデル開発支援、データコンサルティング)
- 得意領域:バウンディングボックス、セマンティックセグメンテーション、キーポイントアノテーションなど
FastLabelが選べられる理由
- AI開発全般を支える「統合プラットフォーム」:FastLabelのプラットフォーム「FastLabel」は、単なるアノテーションツールではありません。データの管理・可視化、品質管理、モデルの学習・評価まで、AI開発に必要な機能を統合し、プロジェクト全体の生産性を飛躍的に向上させます。
- 大手企業も認める豊富な実績と専門性:自動運転(AD/ADAS)や産業用AI、医療画像解析など、特に高い品質とセキュリティが求められる分野で、トヨタ、ソニー、株式会社Ridge-iといった業界のリーディングカンパニーとの豊富な取引実績を誇ります。
- 徹底した「品質管理プロセス」と「共創体制」:製造業の生産管理手法を取り入れた独自の品質管理プロセスを構築します。さらに、プロジェクト初期段階から顧客と伴走し、最適なアノテーション仕様を「共創」することで、手戻りのない高品質な教師データ作成を実現します。
- AIによる「アノテーションの自動化・効率化」:プラットフォームに搭載されたAI機能(自動ラベリング、AIによる品質チェック等)を活用することで、人手だけに頼らない効率的なアノテーションを実現します。これにより、大規模なデータセットも迅速かつ高精度に処理することが可能です。
こんな企業におすすめ
- アノテーションだけでなく、データ管理やMLOps構築までを一貫して効率化したい企業
- 自動運転や医療など、特に高い品質とセキュリティが求められるプロジェクトを持つ企業
- 専門家と相談しながら、最適なデータ仕様を固めていきたい企業
Datatang株式会社は、AIのアルゴリズムやソフトウェア、アプリを開発している企業へのAI学習用データを提供するサービスに特化した会社です。画像、動画、音声、テキストなどのさまざまなデータ形式に対応できます。

- 設立年:2020年
- 本社:日本
- 主なサービス:AI学習データ提供(自社データ・カスタマイズデータ)、AI学習データの収集・アノテーション ・プラットフォーム提供事業
- 得意領域:3D点群アノテーション、画像アノテーション、音声アノテーション、動画アノテーション、テキストアノテーション
- 認証・許可:EUの一般データ保護規制のGDPR、品質管理システムのISO9001、情報セキュリティ認証のISO27001、データ採取許可
Datatangが選べられる理由
- 様々な利用に沿った学習データセットの提供:Datatangは、顔認識、物体検出、スマートドライブ、自動翻訳、OCR、音声認識など、用途に応じた高精度な学習データセットを提供しています。特にスマートドライブ分野では、ストリートビューやドライバーの行動データなど、自動運転技術に活用可能なアノテーションデータの提供実績があります。
- グローバルクライアントとの確かな実績: 10年の運営を通じて、世界中で1,000社以上の企業と取引実績があり、累計で45,000セット・2,500TBを超えるデータを提供します。
- 大規模な人材リソース:100人以上のデータ管理エキスパートと、2,000人規模のデータ処理チームを擁し、お客様の規模に合わせたプロジェクトの品質と適時性を確保します。
- 自社開発のアノテーションプラットフォーム「Shujiajia Pro」:1万件以上のプロジェクト実績をもとに開発された「Shujiajia Pro」は、AIアルゴリズムによる事前識別機能を搭載します。半自動アノテーションにより、作業効率を30%以上向上させます。
こんな企業におすすめ
- 自動運転やスマートドライビング関連のアノテーションデータを必要とする会社
- 医療画像診断向けのAI開発を行っている会社
- 顔認識、物体検出、行動分析などを通じて顧客体験(CX)を向上させたい会社
株式会社Nextremerは、「データによって新たな価値を創出し、人の可能性を高め続ける」をミッションに、教師データ作成とAIモデル構築を得意とし、AIの研究から実用化までをワンストップでサポートします。要件定義から教師データの作成まで総合的にサポートするデータアノテーションサービスを提供しています。

- 設立年:2012年
- 本社:日本
- 従業員数:20人
- 主なサービス:機械学習モデルの検証や開発と学習用データ作成(画像、動画、テキスト、音声)、アノテーション用のデータ収集
- 得意領域:画像、動画、テキスト、音声に加え、センサー、3D点群など様々なデータ形式に対応可能です。
株式会社Nextremerが選べられる理由
- 研究開発に裏打ちされた技術力(特にNLP・画像認識):長年の研究開発で培ったNLPと、需要が急増している画像認識の両分野に高い専門性を有しています。この技術的知見が、質の高いアノテーション設計とデータ作成に直結しています。
- 開発途中の仕様変更への柔軟な対応力:AI開発では、学習を進める中でデータ要件の変更や追加が頻繁に発生します。Nextremerは、豊富な開発経験に基づき、こうしたプロジェクト途中の仕様変更にも柔軟に対応します。アジャイルな開発サイクルを強力にサポートします。
- Nextremerのアノテーション外注システム「AnnoEase」:このシステムにより、仕様書の作成・提出から、見積、契約、進捗確認、納品、支払いまで、外注に関するあらゆる業務を一元管理できます。
こんな企業におすすめ
- 自然言語処理(NLP)や画像認識分野のAI開発を行っている企業
- アノテーションの仕様定義に不安があり、専門家のアドバイスを受けたい企業
ANNOTEQは、クラウドソーシング事業のパイオニアである株式会社うるるが運営するアノテーションサービスです。Deep Learningモデルの構築に必要な学習データセットの構築を支援する日本で唯一の会社です。
最大の特徴は、国内最大級となる100万人以上のクラウドワーカーという圧倒的なリソースを活用し、大規模なアノテーションプロジェクトを高速かつ高品質に実行できる点にあります。
- 設立年:2001年
- 本社:日本
- 主なサービス:データ収集、データアノテーション
- 得意領域:画像・動画データ収集、手書き文字データ収集、画像・動画分類、自然言語分類、画像・動画適正判定、音声適正判定、動画音声文字起こし、物体検出、領域抽出
- 認証・賞:ISMS(ISO27001)
ANNOTEQが選べられる理由
- 100万人のワーカーによる圧倒的な処理能力:国内最大級のクラウドソーシングプラットフォームと連携し、膨大なデータ量を短期間で処理することが可能です。1週間で10万件以上の作業にも対応できるスケーラビリティは、他社にはない大きな強みです。
- BPO事業で培った徹底した品質管理体制:複数人によるダブル・トリプルチェック体制を標準とし、クラウドソーシングでありながら高い精度を担保します。
- 多様なニーズに応えるデータ収集サービス:アノテーションの前段階である「データ収集」にも対応します。Webからの収集はもちろん、スマートフォンのカメラで撮影した画像や、手書き文字、アンケートなど、現実世界の多様なデータを収集するサービスも提供しており、質の高いオリジナルデータセットの構築を支援します。
- セキュリティ要件に応じた作業環境:限定されたワーカーのみが作業する専用環境を構築するなど、柔軟なセキュリティ対策を講じます。これにより、金融や医療など、特に高いセキュリティが求められる機密性の高いデータにも対応可能です。
こんな企業におすすめ
- 短期間で大量のデータを処理する必要がある会社
- セキュリティ要件が厳しいプロジェクトを持つ会社
アディッシュ株式会社は、長年にわたり企業のソーシャルメディア監視やカスタマーサポート、Webサービスの健全性モニタリングなどを手掛けてきた「コミュニケーション課題解決のプロフェッショナル」です。
同社の最大の強みは、事業を通じて培った「文脈を読み解く力」と「ユーザーコンテンツの深い知見」を、AIの教師データ作成に活かしている点にあります。特に、人の感情や意図といった、機械的な判断が難しい領域のアノテーションで高い品質を発揮します。
- 設立年:2014年
- 本社:日本
- 従業員数:611名
- 主なサービス:データアノテーション(分類・ラベル付け・検出)、データクレンジング
- 対応データ:画像、動画、テキスト、音声など幅広く対応
アディッシュが選べられる理由
- SNS・CGM領域の深いドメイン知識:誹謗中傷や不適切な投稿の監視で培ったノウハウを活かし、テキストのニュアンスや画像の文脈を正確に捉えたアノテーションを実現します。チャットボット「hitobo」などの自社AIプロダクト開発実績も、その技術力と知見を裏付けています。
- AIと人のハイブリッド体制による品質と効率の両立:AIによる一次的な自動処理と、専門スタッフによる目視での品質チェックを組み合わせることで、高精度と効率化を両立。単純作業はAIで高速化しつつ、最終的な品質は経験豊富な「人」が担保する、信頼性の高い運用体制を構築しています。
- 大規模リソースによる高いスケーラビリティ:国内最大級のクラウドソーシングプラットフォーム「CrowdWorks」などと連携し、大規模なリソースを確保。これにより、数万〜数十万件単位の大規模なアノテーションプロジェクトにも、短納期かつ柔軟に対応することが可能です。
こんな企業におすすめ
- SNSの投稿データや口コミなど、ユーザー生成コンテンツ(UGC)のアノテーションが必要な会社
- カスタマーサポート用のチャットボットやFAQの精度向上を目指している会社
- 誹謗中傷対策など、コンテンツの健全性を判定するAIモデルを開発している会社
株式会社ヒューマンサイエンスは、1985年の創業以来、40年近くにわたりマニュアル制作や多言語翻訳、eラーニングコンテンツ開発を手掛けてきた「言葉と教育のプロフェッショナル」です。
その最大の強みは、長年の事業で培った高度な言語処理能力と、国際規格に準拠した厳格な品質管理体制をアノテーションサービスに応用している点です。特に、自然言語処理(NLP)領域における教師データ作成で、他社にはない深い知見と信頼性を誇ります。

- 設立年:1985年
- 本社:日本
- 主なサービス:マニュアル作成、翻訳、教育・eラーニング、AI・アノテーション、人材派遣
- 得意領域:自然言語分類、物体検出、意図抽出、領域検出、音声認識
- 認証・賞:ISMSの国際規格 ISO/IEC 27001:2013、翻訳サービスの国際規格 ISO 17100:2015、品質マネジメントシステムに関する国際規格 ISO 9001:2015、ポストエディットの国際規格 ISO 18587:2017
ヒューマンサイエンスが選べられる理由
- 4,800万件超の圧倒的な実績と品質:これまでに4,800万件以上という膨大なアノテーション実績を誇ります。翻訳サービスで取得している国際規格「ISO 17100」に準拠したプロジェクトマネジメントと品質管理プロセスをアノテーションにも適用し、高品質な教師データを安定的に提供します。
- 翻訳・マニュアル制作由来の高度な言語処理能力:テクニカルライティングや翻訳で培った「正確に意味を理解し、定義する能力」は、アノテーションにおける仕様定義や、曖昧さの排除に大きく貢献します。対話シナリオの作成や文章の意図解釈など、高度な言語理解が求められるタスクで特に強みを発揮します。
- 多様なニーズに応える専門性と柔軟な体制:自然言語や画像の基本的なアノテーションに加え、音声認識用のデータ作成や、地図のルート検索精度向上を目的とした特殊なアノテーションなど、幅広い実績を保有。顧客の要望に応じて、プロジェクトごとに最適なチームを編成し、柔軟に対応する体制が整っています。
こんな企業におすすめ
- 自然言語処理(NLP)やAI翻訳、対話型AI向けの高品質な教師データを求めている会社

内製化の壁とアノテーション外注のメリット
アノテーション業務を自社で内製化することには、一定のメリットがある一方で、多くの企業が直面する課題も存在します。ここでは、アノテーションを内製化する際に日本企業が抱える主な問題点と、それに対する外注という選択肢の有効性について解説します。
内製化における主な課題
- 高コストと人材不足:社内でのアノテーションチームの立ち上げ・運営には、人材の採用、トレーニング、マネジメント体制の構築など、膨大な時間とコストがかかります。さらに、日本では少子高齢化によって人材の確保が年々困難になっており、採用コストの上昇や採用期間の長期化が企業の大きな負担となっています。
- 専門人材の育成と確保の難しさ:アノテーション業務は単純作業に見えて、精度を高めるには一定のスキルとドメイン知識が不可欠です。特に医療・製造・自動運転などの分野では、専門的な知識が必要とされ、自社内で対応可能な人材を見つけることが難しい状況です。
- プロジェクトの拡張性に限界:市場の需要変化や短納期プロジェクトに対応するために、短期間で大規模なチームを組成・拡大することは非常に困難です。必要なスキルを持つ人材の確保とオンボーディングには時間がかかり、結果的にAIモデル開発の遅延や競争力の低下を招くリスクがあります。
- 業務の複雑さと時間制約:アノテーション作業を社内で管理するには、ワークフロー、品質管理、納期管理などにリソースを多く割かなければなりません。本来のAI開発に集中すべき人材が管理業務に追われることにより、開発スピードの低下や市場投入の遅れに繋がる可能性があります。
アノテーション外注のメリット
では、外部委託によってこれらの課題をどのように解決できるのでしょうか?
- コスト削減と柔軟な料金体系:外注により、採用・教育・設備構築にかかるコストを回避できます。特にオフショア(例:ベトナムなど)を活用することで、日本国内に比べて大幅なコストダウンが可能です。
ベトナムオフショア開発の詳細は、以下の記事をご参照ください。
ベトナムでラボ型開発を行うメリットと成功ポイントを徹底解説
- 専門性の高い人材へのアクセス:アノテーション専門企業は、分野に特化した経験豊富な人材を多数抱えており、医療・製造・自動運転など、高い精度が求められるプロジェクトにも柔軟に対応可能です。
- スケーラビリティとスピード:外注先は大規模なチーム体制やクラウドソーシング基盤を持っており、急なスケジュール変更や作業量の増加にも迅速に対応。結果として、AIモデル開発のスピードアップが期待できます。
- 自社のコア業務への集中:アノテーション作業を外部に委託することで、自社のリソースをAIモデル開発や戦略立案などのコア業務に集中させることができます。特にスタートアップや研究機関にとっては大きなメリットです。
では、アノテーションは内製と外注、どちらを選ぶべきなのでしょうか。
これは「All or Nothing」の二者択一で考える必要はありません。自社のプロジェクトフェーズやデータの特性に応じて、最適な方法を選択することが成功の鍵となります。
- 「内製」が向いているケース:事業の根幹に関わる機密性の高いデータや、PoC(概念実証)のための少量データを扱う場合など、徹底した管理とコントロールが求められる場面では、内製が最適な選択となるでしょう。
- 「外注」が真価を発揮するケース:一方で、数十万件を超える大規模データの処理、タイトな開発スケジュール、そして多様な専門スキル(例:医療画像、3D点群データなど)が求められるプロジェクトでは、外注がその真価を発揮します。専門家のリソースを活用することで、コストを最適化し、開発スピードを飛躍的に加速させることが可能です。

最も賢明な選択肢は「ハイブリッド型」
さらに、多くの成功企業が採用しているのが、両者の利点を組み合わせた「ハイブリッド型」のアプローチです。
例えば、「プロジェクト初期は外注パートナーと共に高品質な教師データと仕様策定のノウハウを迅速に確保し、体制が整った段階で徐々に内製化へ移行していく」という戦略は、非常に賢明と言えます。
このように、自社の状況に合わせて内製と外注を柔軟に使い分けます。それこそが、AIプロジェクトの成功確率を最大化させるための、現実的かつ効果的なリソース戦略なのです。
アノテーションサービス会社との連携におけるベストプラクティス
アノテーションの外注は単に作業を丸投げするだけでは成功しません。外注パートナーと強固な協力関係を築き、プロジェクトの目標を共有することが不可欠です。
ここでは、プロジェクトを予算内で、納期通りに、そして最高の品質で完了させるための、具体的な7つのステップをご紹介します。この手順を踏むことで、外注パートナーとの連携を最大限に最適化できるでしょう。

ステップ1:初期コンサルテーションで認識をすり合わせる
プロジェクトを開始する前に、まず外注パートナーと詳細な打ち合わせ(初期コンサルテーション)を行い、期待値と目標を完全に一致させることが重要です。この段階での認識のズレが、後の手戻りやトラブルの最大の原因となります。
詳細な業務
- プロジェクトの背景と目的を共有する: なぜこのアノテーションが必要なのか、最終的にどのようなAIモデル(例:自動運転の物体検知、医療画像の診断支援)を開発したいのかを具体的に伝えます。
- プロジェクトのスコープを明確にする: 対象となるデータ量、アノテーションの種類、そして厳守すべき納期を定義します。
- 専門的な要件を伝える: 医療分野における個人情報保護法(HIPAAなど)や、自動運転業界の安全基準など、業界特有の要求事項や準拠すべき規格があれば、必ずこの時点で共有します。
なぜ重要か?
初期段階でプロジェクトの全体像とゴールを正確に共有することで、後の「言った、言わない」といった誤解を防ぎます。これにより、双方が成果物とスケジュールに対して共通の認識を持つことができ、プロジェクトが円滑に進行します。
ステップ2:詳細なアノテーションガイドラインを作成する
一貫性と精度を担保する上で、「明確なルールブック」であるアノテーションガイドラインの存在は不可欠です。優れたガイドラインは、作業プロセスを効率化し、エラーや修正の回数を劇的に減らします。
詳細な業務
- バウンディングボックス、セグメンテーションマスク、画像分類などの各アノテーション種類の視覚的な例と定義を作成する。
- 判断に迷うケースのルールを定める: 「対象物が他の物体に隠れている場合はどうするか」「どこまでを同一のオブジェクトとしてラベリングするか」など、作業者が判断に迷いそうなケース(エッジケース)のルールを明文化します。
- 品質基準と使用ツールを明記する: 許容できる品質レベル(例:精度98%以上)や、指定するアノテーションツールを伝えます。
なぜ重要か?
詳細なガイドラインは、作業者の主観によるブレをなくし、誰が作業しても同じ品質が保たれる体制を築くための設計図です。結果として、修正作業が減り、品質向上と納期短縮に直結します。
ステップ3:ニーズに合った適切な会社を選定する
適切な外注パートナーを選ぶことは、プロジェクトの成否を左右します。特に、専門性の高い分野では、パートナーの経験値が品質に直接影響します。
詳細な業務
- 実績と導入事例を確認する: 候補企業の過去のプロジェクト実績、顧客からの評価、そして自社の業界(例:医療、自動運転、製造業など)における経験の有無をレビューします。
- 技術的なスキルセットを見極める: プロジェクトで要求されるアノテーションの難易度(例:複雑なセマンティックセグメンテーション、3Dキュボイドなど)に対応できる技術チームかどうかを確認します。
- ツールへの対応力を確認する: 自社で利用しているツールやプラットフォーム(例:CVAT, Labelbox)への対応経験があるか、または柔軟に対応できるかを確認します。
なぜ重要か?
自社の業界や技術要件に関する知見を持つパートナーは、潜在的な課題を予測し、より効率的で精度の高い解決策を提案してくれます。適切な専門性を持つパートナーを選ぶことで、予期せぬ遅延や品質問題を未然に防ぐことができます。
選ぶ方法の詳細は下記の記事をご参照ください。
アウトソーシングサービスプロバイダーを選択する際にはどうすればよいでしょうか?
ステップ4:定期的なコミュニケーションと進捗追跡を確立する
プロジェクトが一度動き出したら、あとはお任せ、ではいけません。計画通りに進行しているかを確認し、問題が大きくなる前に対処するためには、継続的なコミュニケーションが不可欠です。
詳細な業務
- 定例会議を設定する: 週次や隔週など、定期的なミーティングをスケジュールし、マイルストーンの達成度、進捗状況、そして課題や懸念事項について話し合います。
- 進捗を可視化する: プロジェクト管理ツール(Jira, Asana, Backlogなど)や共有プラットフォームを活用し、作業の進捗状況、納期、精度などの重要業績評価指標(KPI)をリアルタイムで追跡できるようにします。
- 期待値を明確にする: 修正依頼や追加の要望に対する対応リードタイムについて、事前に期待値をすり合わせておきます。
なぜ重要か?
定期的なコミュニケーションは、プロジェクトの軌道修正を迅速に行う機会を提供します。問題の早期発見・早期解決につながるだけでなく、発注側と受注側の信頼関係を醸成し、プロジェクトの成功確率を高めます。
ステップ5:品質保証とフィードバックループを監視する
アノテーションプロジェクトにおいて、品質保証(QA)は心臓部とも言えるプロセスです。納品されるデータが品質基準を満たしていることを確実にするため、多層的なレビュープロセスを導入し、定期的にフィードバックを行う仕組みを構築しましょう。
詳細な業務
- QAプロセスを定義する: 「作業者による自己チェック → 別担当者によるクロスレビュー → 発注側による最終検査」など、具体的なレビューの段階と担当者を明確に定義します。
- 反復的なフィードバックを奨励する: 特に複雑なアノテーションが含まれる場合は、プロジェクトの早い段階から少量ずつ納品してもらい、フィードバックを繰り返す「イテレーティブな開発」方式を取り入れます。
- エラー率を追跡し、迅速に是正する: 発生したエラーの種類と頻度を記録・分析し、パートナーと協力して速やかに修正作業を行います。
なぜ重要か?
堅牢なQAプロセスは、最終的な成果物が期待通りの精度と一貫性を備えていることを保証します。プロジェクト終盤での大規模な手戻りという、最もコストのかかる事態を未然に防ぎます。
ステップ6:建設的なフィードバックを提供し、継続的な改善を促進する
納品されたアノテーションデータは、必ず詳細にレビューし、具体的なフィードバックを提供することが重要です。単なる「ダメ出し」ではなく、パートナーがプロセスを改善できるような「建設的なフィードバック」を心がけましょう。
詳細な業務
- ガイドラインとの整合性を確認する: 納品されたデータが、精度や一貫性において、最初に定めたガイドラインと一致しているかを丁寧にレビューします。
- 具体的かつ実行可能な指摘を行う: 「この部分のラベリングが甘い」ではなく、「この画像のAの部分は、ガイドライン3-2項に基づき、BではなくCとしてラベリングしてください」のように、具体的で、次に行うべきアクションが明確なフィードバックを伝えます。
- 振り返り(KPTなど)を実施する: 必要に応じて、プロジェクト完了後に振り返りのミーティング(KPT: Keep, Problem, Tryなど)を行い、今回のプロジェクトで得た教訓を次の協力体制に活かします。
なぜ重要か?
継続的な改善の文化を育むことで、パートナーのスキルと理解度が向上し、将来のプロジェクトはより効率的かつ高品質になります。これは、お互いが進化し、より強固なパートナーシップを築くための投資です。
ステップ7:完了したプロジェクトを評価し、将来の作業を計画す
プロジェクト完了時には、パートナーシップ全体の成功度を評価し、将来の協力関係に向けた調整点を洗い出すことが重要です。この評価は、次のプロジェクトをより良くするための貴重なデータとなります。
詳細な業務
- 最終成果物を初期目標と照らし合わせる: 最終的な納品物が、当初の目標と期待値を満たしているかを評価します。
- QCDを評価する: 品質、コスト、納期の各項目について、パートナーのパフォーマンスを客観的に評価します。
- 長期的なパートナーシップを検討する: 今後のアノテーション計画を共有し、長期的なパートナーシップの可能性について話し合います。
なぜ重要か?
プロジェクトの成功をデータドリブンで評価することで、感情論ではない客観的な判断が可能になります。これにより、両者にとって生産的で、ビジネス目標に沿った関係を継続的に築いていくことができます。

アノテーションの外注の相場はいくらですか?
アノテーションを外注する際、担当者の方にとって、最も気になる点の一つは「費用」でしょう。しかし、「相場はいくら」という質問に正確な答えを出すことは非常に困難です。なぜなら、料金はプロジェクトの要件やデータの種類によって大きく変動し、複数の料金体系が存在するためです。
ここでは、主要な料金モデルと、価格を左右する要因について詳しく解説します。これを理解することで、自社のプロジェクトに最適なパートナーと価格プランを見極める手助けとなります。
主要な料金モデル
アノテーションの料金体系は、主に以下の4つのモデルに分類されます。

1. ラベル単価(アノテーション単価)型
- 概要: 作成したラベルやアノテーションの「数」に基づいて料金が発生する、最もシンプルなモデルです。
- 最適なプロジェクト: 画像分類や物体検出など、作業量がラベル数に直結するプロジェクト
2. 時間単価(人月/人日)型
- 概要: アノテーターが作業に費やした「時間」に基づいて料金が発生します。日本のIT業界で一般的な「人月単価」や「人日単価」に近い考え方です。
- 最適なプロジェクト: 仕様が複雑で試行錯誤が必要なタスクや、要件が固まっていないプロジェクト
3. プロジェクト固定型
- 概要: プロジェクト全体に対して、あらかじめ決められた固定の価格が設定されます。要件定義、ツール準備、品質管理など、関連作業一式が含まれることが多く、大規模なプロジェクトで採用されます。
- 最適なプロジェクト: 要件や作業量が明確で、仕様変更が少ない大規模・長期プロジェクト
4. ボリュームディスカウント型
- 概要: データ量やアノテーション数が多くなるほど、単価が安くなる料金体系です。上記の「ラベル単価型」などと組み合わせて適用されることが多くあります。
- 最適なプロジェクト: 大量かつ継続的な発注が見込まれる長期プロジェクトに適します。パートナーと良好な関係を築くことで、コストメリットを最大化できます。
価格を決定づける主要因
アノテーションの料金は、主に以下の5つの要素によって大きく変動します。見積もりを比較検討する際は、これらの要素がどのように価格に反映されているかを確認することが重要です。

アノテーションの難易度
作業内容の複雑さは、価格に最も直接的に影響します。作業に要する時間とスキルレベルが、そのままコストに反映されるためです。
- 比較的安価な作業: テキストの感情(ポジティブ/ネガティブ)を分類するタグ付けなど
- 中程度の作業: 画像内の物体を四角で囲む「バウンディングボックス」など
- 高価な作業: ピクセル単位で対象を精密に塗り分ける「セマンティックセグメンテーション」や、音声データから文字起こしを行い、さらに話者を特定する作業。これらは非常に手間がかかるため、コストも高くなります。
分野特異性に応じたデータ
アノテーション対象のデータが、特定の専門知識を要求するかどうかで価格は大きく変わります。
例えば、 一般的な風景写真のアノテーションと、医師や放射線技師などの専門家でなければ正確な判断ができない医療画像(レントゲン、CTスキャン等)のアノテーションとでは、求められるスキルレベルが全く異なります。
同様に、自動運転開発で用いられるLiDARデータや、特定の科学技術データなども、その専門性ゆえに高価格帯となります。
データの作業量(ボリューム)
発注するデータ量は、単価と総額の両方に影響します。
データ量が多ければ多いほど、「ボリュームディスカウント」が適用され、ラベル1つあたりの単価が下がる傾向にあります。これは、大規模かつ長期的なプロジェクトにおいて大きなコストメリットとなります。
注意点: 当然ながら、量が増えればプロジェクト全体の初期投資額は大きくなります。
納期(スピード)
プロジェクトの完了を急ぐ場合は、追加コストが発生することがあります。
例えば、通常よりも短い納期(短納期)をリクエストする場合、外注先はリソースを優先的に確保・集中させる必要があります。そのため、「特急料金」として割増料金が発生するのが一般的です。
拠点の場所(人件費とオフショア)
外注先の企業がどこに拠点を置いているかも、コストに影響する重要な要素です。
ベトナムやフィリピンなど、IT人材が豊富で人件費が比較的安価な国・地域(オフショア)に開発拠点を持つ企業へ外注することで、品質を維持しながらコストを大幅に削減できる可能性があります。
オフショアを利用する際は、価格の安さだけでなく、品質管理のプロセスや、言語の壁を越えて円滑なコミュニケーションが取れる体制(日本語対応可能なプロジェクトマネージャーの有無など)が確立されているかを慎重に見極めることが成功の鍵となります。
ベトナムでのオフショア開発センター(ODC)設立を成功させる方法については、最新の弊社eブックをご覧ください。
アノテーションの外注の相場
アノテーション(データラベリング)を外注する際の費用は、データの種類や作業内容、品質要件、プロジェクト規模などによって大きく変動します。以下に、2025年時点の日本国内の一般的な相場をまとめます。
画像アノテーション
作業内容 | 相場(1件あたり) |
画像分類 | 数円~10円 |
バウンディングボックス | 約5円~10円/対象物1個 |
セマンティックセグメンテーション | 約100円~300円/画像1枚 |
キーポイント(ランドマーク) | 数円~10円/点 |
※形状が複雑な画像や高精度が求められるプロジェクトでは、1枚あたり1,000円を超えるケースもあります。
テキストアノテーション
作業内容 | 相場 |
1文(140文字程度) | 30円~ |
ドキュメント | 1文字0.4~2円 |
※固有表現タグ付けや依存構造解析など、複雑な構造処理が含まれる場合は、さらに高額になる傾向があります。
音声アノテーション
作業内容 | 相場(1分あたり) |
ケバ取り | 120円~ |
文字起こし | 250円~ |
整文 | 350円~ |
動画アノテーション
作業内容 | 相場(1件または1分あたり) |
バウンディングボックス | 10円~/対象物1個 |
分類 | 約20円~/1ファイル(長さにより変動) |
本記事でご紹介した料金相場はあくまで参考価格であり、実際の費用は案件内容や要件によって変動します。正確な価格を知るには、各社への個別相談が必要です。
アノテーション外注にかかるコストの詳細をお知りになりたい場合は、LTS Groupまでお気軽にお問い合わせください。 ご要件に応じて、正確かつ迅速なお見積もりをご提供いたします。

よくある質問
おすすめのアノテーション外注企業は何ですか?
アノテーション外注のパートナーとしては、LTS Group、FastLabel株式会社、Datatang株式会社、株式会社Nextremer、ANNOTEQ(アノテック)、アディッシュ株式会社、株式会社ヒューマンサイエンス などが挙げられます。これらの企業は、豊富な実績と専門スキルを持つ人材を擁し、さまざまな業界・プロジェクトに対応してきた経験があります。
ただし、最適な委託先は、プロジェクトの内容や要件(データの種類や量、必要な専門性、セキュリティレベル、予算など)によって大きく異なります。
「品質」「セキュリティ」「専門性」「コミュニケーション体制」「料金体系」といった選定基準に基づき、自社のニーズに最も合致するパートナーを見つけることが必要です。
アノテーション外注のメリットは何ですか?
アノテーション外注は内装の問題を解決し、大きなメリットをもたらす可能性があります。アノテーション外注の主なメリットはコストの最適化、品質と精度の向上、プロジェクトスピードの加速、コア業務への集中などが含まれます。
アノテーションの外注の相場はいくらですか?
費用は、アノテーションの「難易度」「専門性」「作業量」「納期」など、多くの要因によって大きく変動するため、明確な相場を提示するのは困難です。
あくまで目安ですが、比較的簡単なバウンディングボックスで1画像あたり数円~数十円、専門知識を要するセマンティックセグメンテーションでは1画像あたり数百円以上になることもあります。
最も確実な方法は、複数の企業に具体的な要件を伝えて見積もりを取得し、その内訳を比較検討することです。これにより、自社のプロジェクトにおける適正価格を把握できます。
結論
アノテーション外注は、AI開発を加速させ、ビジネスの競争優位性を確立するための、今や不可欠な戦略です。多くの日本企業が直面している「リソース不足」「品質管理」「コスト」といった内製化の壁を乗り越え、本来注力すべきコア業務にリソースを集中させるための、最も現実的かつ強力な解決策と言えるでしょう。
成功の鍵は、本記事でご紹介した選定ポイントに基づき、自社のプロジェクトに最適なパートナーを慎重に見極めることです。単なる「作業委託先」としてではなく、AI開発のビジョンを共有できる「戦略的パートナー」として、信頼できる企業を選びましょう。
この記事が、貴社の重要な意思決定の一助となり、AIプロジェクトを成功へと導く羅針盤となれば幸いです。未来を切り拓く第一歩として、まずは気になるLTS Groupにお問い合わせいただき、具体的なご相談から始めてみてはいかがでしょうか。
